角田貴彦さんにGALE電子レファレンスについてお話を伺いました

 

 

 関西学院大学図書館

オンラインが本に取って代わるというような意識はないです

ゲスト:角田 貴彦 さん
機 関:関西学院大学図書館 
トピック:
Gale eBooks



毎年、どれくらいの冊子体のレファレンスをご購入されているのですか?

本学では洋資料の場合、専門的なレファレンス資料は各学部で選書し、図書館は基本的なものを選ぶことになっています。毎月の選書会議で、平均10~15タイトルは検討していますから、それを全て購入しているとしたら200タイトルくらいにはなりますね。それ以外にも、改訂版が出版されるたびに継続購入しているものもあります。しかし図書館では一度購入した図書は資産として登録されますので、新しい版が出たからといって、古い版を捨てることができませんから、大型のレファレンス資料が改訂されると、かなり書架を圧迫してますよ。Galeからも Encyclopaedia Judaica がもうすぐ出ますよね?

 

はい。22巻の予定です。冊子体のレファレンスに関して、今まで特に図書館で抱えていた問題点はありますか?

まずスペースの問題。それから予算。20巻くらいになると非常に高いです。(笑)本学の場合は複数キャンパスあるので、必要な場合は、複数セット購入しなくてはならないんです。一般書なら取り寄せて読むことは可能ですが、レファレンス資料の場合は、調べ物に使うわけで、取り寄せての利用は現実的ではないですよね。ですから、いずれも備えたいということで、複数セット買う場合も結構ありました。Gale以外のレファレンス資料は今も複数セット購入する場合があります。

 

Gale eBooks の一番気に入った点を教えていただけますか?

他のeBookも検討したのですが、やはりGaleが一番レファレンス資料が充実していたことですね。もともとGaleのレファレンス資料自体をよく買っていたこともあって、それらが今後蓄積されていくのであれば、少しでも早く導入したほうがいいかなと思いました。分野的にも本学が必要としているものと合いましたので。  検討したeBookの中には収録内容がレファレンス資料でないところや、利用方法が擬似図書館みたいなシステムで、貸出し制のところもありました。そんな図書館ごっこみたいなことはまどろっこしいだけですね。料金も1冊ずつに年間使用料がかかるところもありましたが、Galeの場合は、eBookは買い切りで潔いし、理にかなったシステムでわかりやすい。もちろん、何よりも収録している内容が定評のあるものだと分かっていますしね。

 

eBookには、いい印象を持っていませんでした


Gale eBooksをご紹介してからeBookへの認識は変わられましたか?

僕は、正直言ってeBookにはあんまりいい印象を持っていませんでしたね。たぶん、名前がよくないんじゃないかと思います。eBookというと、PDFで単行本を読むイメージがあって、それだったら紙の本でいいじゃないかという思いがつきまとっていて。だから、最初eBookと紹介された時は、レファレンス資料が電子化されたものとは思いませんでした。今も、僕は単行本を読むようなeBookというものは好きじゃないです。

 

eBookに代わるいい言葉があるといいのですが。

図書館の人は基本的に本が好きですからね。なんか、eBookと聞くと、本の偽物っていうか、新しく出てきて、本にとって代わろうとしているあいつらかって感じがするんでしょうね。それはともかくとして、eはeですよね。電子ですから。でもBookというと、単行本のような気がするんですよ。かといって、e-Reference だとそのまますぎるし。


名前募集しましょうか?

賞金100万くらい出るんなら必死で考えますよ(笑)。


今後、新しいレファレンスが刊行された時、書籍とeBookどちらで購入するかの判断基準はどういったことになりますか?

そうですね。本学の場合、複数キャンパスで必要なタイトルはeBookで買って、内容が専門的でいずれかのキャンパスでしか使わないものは、本で買っていこうかなと思っています。


そうすると、関西学院大学さんの場合は、しばらくは、書籍とeBookを併用されるわけですね。

もちろん、全部eBookになれば横断検索もできて便利ですけど、予算の関係もありますからね。利用の少なそうなタイトルについては、今のところは本で価格を抑えて、種類を沢山購入したいですね。逆に利用の多そうなタイトルは、電子にしてより便利に利用してもらえたらと思います。


過去に冊子で購入されたタイトルをeBookに置きかえる可能性はありますか?

今は考えていないです。買い換えられたら一番いいんですが、やっぱり予算の問題がありますからね。それに本学の場合、重複購入は厳禁にしています。学部からの図書の発注も全て図書館で集約して集中発注していて、だいたい年間1000万円ぐらいの重複購入を省いています。何といっても、重複購入は一番の悪です!(笑)ですから、媒体が電子に変わったとしても、内容が同じ本なら冊子との重複購入は難しいですね。でも、レファレンス資料の場合は改訂がありますから、よいタイトルについては改訂時にeBookに変えていこうと思っていますし、予算さえ許せば、過去に買ったものでもよく利用されているものに関してはeBookに置きかえるという考え方自体はいいことだと思います。


画面の使いやすさはいかがですか?

シンプルで使いやすいと思います。学生でも簡単に使えそうですよね。本学ではまだ収録しているタイトルが少ないので、今後増やしていきたいと思います。

 

自動翻訳機能に関してはどう思われますか?

僕は絶対にあったほうがいいと思います。 逆に無い方がいいと言われるのはどういう理由なんですか?


完璧な翻訳ではない点が一つの理由でしょうか。

でも機械翻訳だとしても、ついていなかったら何もヘルプもないわけですからね。注意書きがあって、翻訳書のように専門家が翻訳したものとは質が違うこと納得した上で利用するなら、後は利用者に任せればいいんじゃないかと僕は思います。

 

図書館の魅力は、機能性だと思う


電子の商品を導入するにつれて、今後、図書館の役割は変わってくると思われますか?

図書館の専門家の先生方がいろいろ研究されているみたいですが、僕自身はあまり変わらないと思いますね。利用者は本の探し方の代わりにオンライン資料の使い方を聞きに図書館にきますよ。図書館は資料の管理者であって、案内人ですから、それはオンライン商品が増えても変わらないです。それに、本がなくなることはないと僕は思っているので、世話するものが一つ増えたというくらいです。もちろん、オンラインが本に取って代わるというような意識はないです。


そうですか。実は、Gale eBooksのご紹介に行くと、利用者が図書館に足を運ぶ回数が減っているのに、eBookにしてしまったら、余計に誰も図書館に来なくなるのでは?と心配される図書館の方もいらっしゃるのですが・・・。

図書館に人が来ないのは、eBookとかオンライン資料のせいではないと僕は思います。  図書館に魅力がないからですよ。(笑)でも図書館のホームページから図書館が提供するオンライン資料を利用して、それで満足できているのならそれでいいじゃないですか。わざわざ足を運んでもらう手間が省けるわけだし。むしろそれはかえって喜ぶべきことであって、図書館の中に人がいなくて寂しいっていうのは違うんじゃないかと思います。図書館が提供している資料を使ってくれていれば、それで図書館の役目を果たせているわけですから十分だと思います。


今、「魅力ある図書館」というお言葉がでましたが、関西学院大学図書館を魅力ある図書館にするために工夫されていることはありますか?

図書館の魅力っていうと、突き詰めれば機能性だと思うので、システムやサービスの面でも常に改善するようにしています。あと、資料の充実も大事です。いつ来ても読みたい本があるというのも図書館の魅力の一つだと思うので、本も毎週漏れがないように選んでいますし、オンライン資料もいいものはできる限り揃えるようにしています。それから、これは僕個人の趣味みたいなもんですが、「来て楽しい図書館」を目指して広報活動などを工夫しています。例えば、玄関のエントランススペースでは期間ごとに資料展示をしているんですが、そのディスプレイも利用者の目を引くようなものにして、それをきっかけに利用者がすこしでも資料にまた図書館に興味をもてるきっかけになればと思っています。


そういう工夫をされているのは、図書館としては珍しいですね。

今の学生は、魅力がある図書館だから来るとは限らないと思います。図書館が揃えている資料が素晴らしくて、その宣伝もしっかりしている。すこし前なら、そこまですればおのずと図書館と学生が結びついたと思うんですよ。でも今の学生達って、僕らにはわからない部分があって、いくら僕達が伝えようとしても、自分が必要と思わないと図書館には来ないと思うんです。例えば、勉強したくない人間にいくら勉強にいい図書館がありますといっても来ないですよね。PRがうまくできていないから人が来ないんじゃないかとよく言われますけど、図書館がいいと知っていても来ない学生もいっぱいいると思うんです。だから、そういう学生を引き寄せるために、僕は目先の目立つものでも使ってみようかなと思って。(笑)とりあえず、今の学生は学校にはちゃんと来るみたいなんですね。だから、別に目的がなくてもふらっと図書館に立ち寄ってくれればそれでもいいかなと。もし玄関がそういう雰囲気だったら入ってきてくれるかなと思っています。そうそう、冬場には大きなクリスマスツリーを飾ったりもしています。

 

なるほど。学生が入りやすい雰囲気を持つ図書館を目指されているのですね。私が拝見したところ、たくさんある図書館の椅子はほとんど学生で埋まっていて、驚きました。図書館の工夫が実を結んでいるようですね。本日は、貴重なお話どうもありがとうございました。