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Economist ってどんな雑誌ですか?

The Economist(エコノミスト)は、1843年に創刊された世界で最も歴史の長い経済誌です。現在は完全に雑誌の体裁をとっていますが、創刊当時も今も「Newspaper」を自称していますから、新聞といってもよいかもしれません。

創刊当時、イギリスでは穀物法という保護貿易のための法律を廃止すべきかどうかを巡る論争で国中が沸き上がっていました。自由貿易の信奉者だったウィルソンにより創刊された The Economist は穀物法廃止の論陣を張り、その効果もあり、創刊の3年後には穀物法が廃止されます。その数年後には同じく保護立法である航海条例も廃止され、イギリスでは自由貿易体制が確立します。

The Economist はまさに自由貿易の申し子であり、以後今日に至るまで一貫して自由貿易推進の論陣を張り続けています。自由貿易に加え、自由な人の移動、政府の規制の撤廃、死刑の廃止などが、一貫した社論です。一般的に新聞には世論を気にする傾向がありますが、The Economist は世論に不人気な主張を掲げることにも躊躇しません。その意味では、ブレのない雑誌と言えます。

創業者ジェームズ・ウィルソンは、自由貿易の他に、数字を論拠に主張を掲げることを方針としていました。そのため、The Economist には様々な統計情報が掲載されています。今ではビッグマック指数が有名ですが、物価指数の歴史の中では、The Economist は世界に先駆けて、卸売物価指数を作成し掲載したことで知られています。入手が難しい歴史的な統計を提供してくれる新聞です。

The Economist は2012年現在、全世界で発行部数約157万部という驚異的な数字を誇ります。しかし、創刊当時は2,000部足らず、10万部に達したのは1970年、50万部に達したのは1992年に過ぎません。20世紀後半から21世紀にかけての目覚ましい部数の伸びは、主としてアメリカ向けのマーケティング・販売戦略の成功や平易な英語の利用に要因があると言われています。発行部数の約半分はアメリカで販売されています。

数字に基づき論を組み立てるという方針の下で、人とモノの自由な移動が豊かさをもたらすという自由貿易の理念を一貫して主張し続け、イギリスを超えて世界の経済紙へと成長した雑誌、これが The Economist です。