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ECCOって何ですか?

ECCO(エコー)、正式名称「Eighteenth Century Collections Online」(18世紀英語・英国出版物集成)は、イギリスとその植民地で刊行された英語刊行物と非英語刊行物、及びその他の地域で刊行された英語刊行物、総計18万5千タイトルを搭載するオンライン・アーカイブです。分野は、総記、歴史、地理、宗教、言語、哲学、美術、文学から、法律、社会科学、医学、科学、技術まで、広範囲に及びます。世界中の1,000を超える図書館がすでに導入しているECCOは、18世紀研究のプラットフォームの役割を果たしています。

では18世紀のイギリスとはどんな時代だったのでしょうか?

先立つ17世紀は、イギリス革命における国王の処刑、30年戦争によるドイツの国土荒廃、疫病と気候寒冷化と飢饉による人口減、魔女狩りの流行など、どこか血なまぐささと暗さが付きまといます。

ところが、18世紀になるとガラッと風景が変わります。社会は落ち着きを取り戻し、気候は温暖化します。経済は上向き始め、人々の生活に余裕が出てきました。雑誌などのジャーナリズムやコーヒーハウスやサロンのような社交の場を通じて、談論を楽しむ風潮が生まれます。世紀後半から始まる産業革命は、まだ19世紀の都市の悲惨な貧困を生むところまでは至っていません。世紀末のフランス革命に影響を受けた急進的な運動も18世紀には見られません。

18世紀は17世紀と19世紀という激動の2つの世紀に挟まれて、明るく、平穏で、寛いだ雰囲気をたたえています。18世紀がしばしば光と調和のイメージで描かれるのも、こんなところに理由があるのかも知れません。

出版の世界に眼を向けても、17世紀と18世紀はだいぶ趣が異なります。17世紀のイギリスでは検閲制度が大きな力を発揮し、だからこそ、ミルトンの『アレオパギティカ』のような出版の自由の古典が生まれました。

ところが、17世紀末に検閲法は廃止され、それを機に、多くの新聞が発行されます。また、18世紀の初頭には著作者の権利が法的に保護され、版権意識が芽生えます。さらに、それまでロンドン、オックスフォード、ケンブリッジ、ヨークでしか認められなかった印刷が18世紀には各地に拡大し、情報流通のインフラが整えられます。こうして近代的な著者と出版業と読者層が誕生します。

今から40年ほど前、18世紀の刊行物を目録化するプロジェクトが大英図書館を中心に始まりました。対象とされたのはイギリスとその植民地で刊行された英語刊行物と非英語刊行物、及びその他の地域で刊行された英語刊行物です。複数の版が存在する場合は、学術的に重要な版が収録されていますが、重要な著者については可能な限り多くの版が収録されています。総タイトル数は18万5千タイトルにおよびます。その後、総タイトルを収録するマイクロフィルム・コレクションが ”The Eighteenth Century” としてリリースされ、2003年には ”Eighteenth Century Collections Online (ECCO)” としてデジタル版がリリースされます。

総記、歴史、地理、宗教、言語、哲学、美術、文学、法律、社会科学、医学、科学、技術など、ECCOが搭載する18万5千タイトルは広範囲の分野に及びます。フルテキスト検索が実装され、検索語一つで分野を問わず、様々な文献が検索結果に現れ、意外な発見に出会うという研究の醍醐味を存分に味わうことができます。

かつて、データベースが存在しなかった頃、研究者は博識と勘を頼りに文献を渉猟しました。それに、誰もが平等に文献にアクセスできたわけではありません。データベースを使えば、特別の博識と勘がなくても、誰でも文献に辿り着いてしまいます。データベース以前の定説が実証的に覆される可能性すらあります。現在世界中の1,000を超す図書館で導入されるECCOは、今や18世紀研究のプラットフォームと言っても過言ではありません。