Environmental History: Conservation and Public Policy in America, 1870–1980
《2023年9月末 リリース予定(11月完成予定)》
環境史アーカイブ第1集は米国の環境保護と環境政策を取り上げ、自然環境保護に関わった個人や団体、政府機関の文書を収録します。
個人文書はアウトドア雑誌のパイオニア『フォレスト・アンド・ストリーム(Forest and Stream)』の編集長を務め、オーデュボン協会の創設メンバーであるジョージ・バード・グリネル(George Bird Grinnell)、ロッキーマウンテン国立公園監督官ロジャー・W・トールズ(Roger W. Tolls)、ホーク・マウンテン野生動物保護区の創設者ロザリー・エッジ(Rosalie Edge)、野生の馬とロバの保護に生涯を捧げたヴェルマ・ジョンストン(Velma Johnston)、林業の父と称されるジョセフ・トリンブル・ロスロック(Joseph Trimble Rothrock)の文書を、政府文書は科学的林業の提唱者ギフォード・ピンショー(Gifford Pinchot)が初代長官を務めた森林局(Forest Service)、西部で灌漑事業を精力的に推進した開墾局(Bureau of Reclamation)、第二次大戦後に広大な公有地の管理運営を行なった土地管理局(Bureau of Land Management)の文書、1920年代から1970年代にかけて州や郡や地方都市が発行した環境保護や環境政策に関する刊行物を、団体文書はアメリカバイソン協会(American Bison Society)の文書を収録します。
米国では工業化に伴い環境破壊が進む中で環境保護運動が早くから誕生し、多様な環境保護思想が形成されました。19世紀以来の米国の環境保護に関わる思想と運動は、現在の環境問題を考える際に立ち返るべき重要な古典的事例とみなされています。本アーカイブに収録される動物保護、国立公園、公有地管理、鉱物資源開発、水資源開発、灌漑事業、森林保護に関する文書群は、現在の自然環境保護の問題を考える上で大きな示唆を与えるものです。
《収録予定*のコレクション》
*収録予定コレクションは最終的なものではありません。追加または変更される可能性があります。
ジョージ・バード・グリネル文書集 1886-1939年
George Bird Grinnell Papers, 1886-1939
・期間:1886-1939年
・原資料所蔵機関:イェール大学図書館
ジョージ・バード・グリネルは米国最古の野生動物保護団体ブーン・アンド・クロケットクラブ(Boone and Crockett Club)の創設メンバーで会長を務め、オーデュボン協会とニューヨーク動物学会の創設にも関わり、アウトドア愛好家向け雑誌で国立公園運動を後援した『フォレスト・アンド・ストリーム(Forest and Stream)』の編集長を務めました。本コレクションはグリネルの書簡や論文を収録します。
ロジャー・W・トールズ文書集 1920-1936年
Roger W. Tolls Papers, 1920-1936
・期間:1886-1939年
・原資料所蔵機関:イェール大学図書館
ロジャー・W・トールズはコロラド山岳クラブの創設メンバーの一人で、ロッキーマウンテン国立公園が誕生した1915年に刊行された『コロラド登山データ』の編纂に携わり、ロッキーマウンテン国立公園監督官としてトレイルリッジロードの建設計画を主導し、イエローストーン国立公園監督官として訪問者が生態系に与える影響を軽減することに努めました。本コレクションはトールズが作成した各種報告書を中心に収録します。多数の写真も含まれています。
ロザリー・エッジ文書集 1930-1954年
Rosalie Edge Papers, 1930-1954
・期間:1930-1954年
・原資料所蔵機関:デンバー公共図書館
ロザリー・エッジは野鳥への関心から全米オーデュボン協会に加盟、特に猛禽類の保護活動に関わりました。その後、緊急保全委員会(Emergency Conservation Committee)を1929年に創設、30年間に亘り会長を務めました。その生涯で最大の成果とされるのが、猛禽類の狩猟地であるペンシルヴァニア州南西部の土地を購入し、ホーク・マウンテン野生動物保護区(Hawk Mountain Wildlife Sanctuary)を創設したことです。本コレクションは、全米オーデュボン協会、緊急保全委員会、ホーク・マウンテン野生動物保護協会、キングズ・キャニオン国立公園に関する文書を収録します。1930年代から1950年代にかけての米国の環境保護運動の動向を伝える貴重な文書群です。
ヴェルマ・ジョンストン文書集 1955-1977年
Velma Johnston ("Wild Horse Annie") Papers, 1955-1977
・期間:1955-1977年
・原資料所蔵機関:デンバー公共図書館
ヴェルマ・ジョンストンは西部の野生の馬とロバ(ブーロ)の保護に生涯を捧げたことにより、「野生馬のアニー」の異名を取りました。それまで顧みられることのなかったこれらの動物の保護のために声を挙げ、議会での法制化に向けたロビー活動を行ないました。ムスタング・ブーロ国際保護協会(International Society for the Protection of Mustangs and Burros)を創設し会長に就任、保護活動のための世論喚起に努める一方で、議会のロビー活動を精力的に行ない、野生馬の追跡に自動車を使うことを禁ずるネヴァダ州法と連邦法を成立させました。本コレクションは野生の馬やロバの保護に関わる活動からプライベートの活動まで、ジョンストンの公私両面の活動を記録する文書群を収録します。
ジョセフ・トリンブル・ロスロック文書集 1862-1922年
The Papers of Joseph Trimble Rothrock, 1862-1922
・期間:1862-1922年
・原資料所蔵機関:複数の所蔵機関
ジョセフ・トリンブル・ロスロックは外科医としてサナトリウムでの結核治療の先鞭をつけた人物ですが、故郷のペンシルヴァニア州で州立の公園や森林の造営にも努め、「林業の父」と称されました。ロスロックの森林保護に関する文書を収録します。
米国連邦政府土地管理局記録集 1944-1979年
United States Bureau of Land Management Records, 1944-1979
・期間:1944-1979年
・原資料所蔵機関:デンバー公共図書館
米国連邦政府土地管理局は1946年の創設以来、2億7,000万エーカーの公有地の管理運営を行なってきました。その業務はエネルギーや鉱物資源開発、牧草地管理、土地利用計画、野生動物や魚類の生息地管理等、多岐におよびます。本コレクションは土地管理に関する書簡や報告書を収録します。
米国連邦政府開墾局プロジェクト史・報告集 1905-1925年
United States Bureau of Reclamation Project Histories and Reports, 1905-1925
・期間:1905-1925年
・原資料所蔵機関:米国国立公文書館、フォート・ルイス・カレッジ南西部研究所
米国連邦政府開墾局(Reclamation Service, 後にBureau of Reclamationに改称)は1902年制定のニューランズ開墾法によって創設された開墾基金の運営を行なうために内務省傘下に創設されました。開墾局は西部諸州の公有地売却によって得た資金でダム、発電所、運河を建設しました。連邦政府の主導により灌漑事業と水資源開発が進められた西部はその景観を大きく変貌させることになりました。本コレクションは開墾局のもとで実施された様々な開墾事業を記録するプロジェクト史と報告を収録します。
米国連邦政府農務省森林局文書集 1870-1981年
United States Forest Service Collection, 1870-1981
・期間:1870-1981年
・原資料所蔵機関:デンバー公共図書館
1891年に制定された連邦森林保護区法(Federal Forest Reserve Act)は公有地に森林保護区を創設する権限を大統領に付与しました。1897年制定の森林管理法(Forest Management Act)は森林保護区の目的を水流保全と米国市民への木材の持続的な供給と定めました。当初、内務省と農務省のもとで管理運営されていた森林保護区(後に国有林)は1905年以降、農務省森林局のもとで一元的に運営されるようになります。森林局は科学的林業を提唱したことで知られる初代長官ギフォード・ピンショー(Gifford Pinchot)のもとで、木材、原生林、鉱物資源、水流から野生動物、放牧、漁業、レクリエーションまで多目的資源としての国有林の管理運営業務を担いました。本コレクションは木材の販売、鉱山や農場開発請求、樹木病の根絶と抑制等、森林局の活動を記録する文書群を収録します。森林監督官の日記や書簡は国有林保護に関わる現場の一次資料として貴重なものです。
アメリカバイソン協会記録集 1899-1949年
American Bison Society Records, 1899-1949
・期間:1899-1949年
・原資料所蔵機関:デンバー公共図書館
アメリカバイソンを保護する団体としてアメリカバイソン協会が1905年創設されました。動物学者のウィリアム・テンプル・ホナーデイが初代会長に、セオドア・ルーズベルト大統領が名誉会長に就任しました。協会が行なった活動の中で特筆すべき業績は、バイソンの個体数把握のために国内外に質問票を送り、アンケート結果に基づきバイソンの個体数に関するセンサス報告を刊行したことです。報告には欧州やロシアに生息するヨーロッパバイソンの個体数も記録されています。1920年代以後、協会は狩猟動物や水鳥、プロングホーン、ワピチ(シカ)等、バイソン以外の動物にも保護活動の対象を拡大します。本コレクションは協会の年報(1905年から1930年)、バイソン個体数に関する調査記録とセンサス報告(1908年から1934年)、協会が利用した様々な参考図書等を収録します。
カリフォルニア大学バークレー校政府研究所所蔵 環境保全・環境政策関係刊行物集 1919-1975年
Institute of Governmental Studies Library, UC Berkley: Selected Publications on Conservation and Environmental Policy, 1919-1975
・期間:1919-1975年
・原資料所蔵機関:カリフォルニア大学バークレー校
カリフォルニア大学バークレー校の政府研究所が所蔵する環境保全と環境政策に関する刊行物を収録します。1920年代から1970年代にかけて州や郡や地方都市の政府機関や各種団体が発行した野生生物管理、土地利用と保存、公衆衛生、大気や水質保全、エネルギー開発等の主題に関する刊行物です。
さらに詳しく
関連分野
- アメリカ史
- 環境法
- 環境研究
- 法律・法学
- 環境科学
- 科学
- technology